100年たったらみんな死ぬ 松田奈緒子著
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『甲子園への遺言』の毒を盛られたあとに、これでようやく浮上。波の上に顔を出しました。
出版社に勤務する姉は、尊敬していた編集長が異動になり、社会派雑誌からカタログ的要素の多いファッション誌にリニューアルした新雑誌で、流行に敏感でオシャレ度の高い新編集長の下でモチベーションが下がっている。前編集長はアルバイトとできちゃった婚なのに、今でもかつての恋人の部屋に勝手に通ってくる。
妹は、仕事一辺倒の会社員だった父に愛想を尽かし出て行った母の代わりに家事をこなしながらの高校生。進学の学費を稼ごうとレジ打ちのアルバイトを始める。
真ん中の兄は、友人たちが皆受かった中で一人大学受験に失敗し、滑り止めの大学に入ってから引きこもり気味。
父は、今では人に役に立つことばかり考えるボランティアが趣味の窓際。
だれもがほとんどうまくいかない状況で始まる。どこかにあるひずみが、もう少しだけゆがんだら、見事に深みに落ちそうなギリギリで、なんとかもがいている。
見事に幸せになるような話ではないけれど、小さなきっかけが少しだけよい方に変わりたいという意識に乗ってきてくれる。そして手放しで夢物語が叶ったりしないのに、漫画的展開はちゃんと用意されている。
兄の友人でもあるインパクトある居候から父の会社の役員まで、この家族も周辺の人も、見事に物語にありがちな設定をしながら、どこにでもいそうな状況の人を組み合わせてこうも話を展開させていくものだ、と面白さに感嘆。
荒いタッチなんだけど(ワイド版で読むから余計にそう感じるのかも)、コマの中の人の配置や切り出した場面、セリフのつなぎ方なんかも、状況=画として、分かるなあ、と漫画神髄発揮。
ラスト。
「100年たったらみんな死ぬけれど それは100年生きたということなの」
「生きることを楽しんでちょうだい 長くて短い100年よ」
は、100年であろうとなかろうと、限りあるなかで、という始まりと終わりの用意されていることなのだということが、その中だけでの出来事なのだということが、生について語られていている。ダメな状況から、運が開けてちょっと努力してみた結果、そういうものが希望のようにもおもう。まるごと希望がこれから「100年」とも。(具体的な希望の持ちすぎは辛いんだけどね)
ちょっとはいいこともあるかもしれない期待。いつか終われるという安心。
それにはさまれているものが100年ごときなんだろうな。
お勧め度☆☆☆☆
「百年の孤独」と言えば、いわずと知れたガルシア・マルケスなのですが、そこから派生したものも、かなりタイトルに強烈なインパクトを受けて創作されているものがあるのでしょう。
(ロック的な言い方だと「インスパイアされた」ってこと?)

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『百年の孤独』のタイトル自体が詩的にきわだっている。
「そんなにも孤独なのか」と耐えられないことと思うだろうか、むしろ「たったそれほどのことだったか」と、ほっと救われる思いに浮かび上がるだろうか。
「人間せいぜい生きて百年だ 百年ですむ」
「人生は永遠には続かない 死んだら解放される 百年のあいだだけだ」
生きても、百年すれば解放される、とするこの高田祐子の本にも、ヒーリング効果は満載だとおもう。
命に限りがあるということは、最終手段ではあるけれど、人生のセーフティーネットだとも感じるから。






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