11 July 2008

闇の果てから 津雲むつみ著

闇の果てから―新編 (1)闇の果てから―新編 (1)
津雲 むつみ

集英社 1996-03


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『花衣夢衣』を読んで知った著者。
まさか昼ドラになるとは思いもしなかった、古い漫画。
花衣夢衣 (1)花衣夢衣 (1)
津雲 むつみ

集英社 1996-12


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ダメな男とダメな女の話、と言ったところなんだが・・・かくも男女はだらしなくも愛するんでしょうかね、ということをありありと描いている長編。戦後から70年代くらいまでの時代背景を堪能できる。価値観も古い因習も背景として、時代錯誤と怒るよりも、タイムトラベリングを遊ぶくらいのつもりで、読んでみるとはまるのだった。
ダメな・・・と言ったけれども、ダメなところがいとおしくも感じるのが、男女の仲といったところか。

*****     *****     *****     *****     *****

この『闇の果てから』は、やはり、随所に古さはあるものの、がらりとテーマは変わって、
なんと、小児性愛癖のある男性が犯罪を起こす経緯をリアルに追う物語なのだ。
ちょうど宮崎勤事件が直接の契機となって、これを描き上げたらしい。

津雲むつみサン、人間の、「男」「女」であるゆえの、弱みやだらしなさと、そういうものを持っているという前提での人間が、性を持つことをそれを乗り越えていく強さを得意としている作家なのだろうか(と、たった2作読んだだけで言うのも極端だが)。

切迫して読んでしまうが、あまりに一気に読むと当たってしまうので、息を詰まらせない程度に、そっとゆっくり、たまに、読み継いでいくのがいいようだ。

幼女を性愛の対象とし、特定の幼女を「僕の天使」と信じ、こっそりとつけ狙いつづける男。
幼女を殺して犯し、遺棄した現場を、偶然にも発見してしまった女性。彼女もまた、幼女時代の性被害者だった。その苦しみから逃れられず、男性と触れ、関わることを厭う生活を送っていたところに、事件の惨劇の跡を見て、フラッシュバックに何度も苛まれる。

執拗な男の犯行を追う一方、かつての被害者の女性が、聞き込みで出会った刑事との関わりで、立ち直れるか、越えられるかという闘いをしく過程をも描く。
その二つの軸がクロスして、ラストに至る。
だが、それでこの類の事件が解決するということでもなく、ただ油断ならない恐ろしさを目の当たりにしたということ、遭ってしまったら恐ろしく立ち直るのは困難だ(できない訳ではない)ということを知らしめている。

お勧め度☆☆

怖いです。

以前に読んだこちらを思い出した。(感想を書いた気がするが見つけられない。mixiに書いたのかも?)
出口のない深い海に溺れているようだ。

児童性愛者―ペドファイル児童性愛者―ペドファイル
Jacob Billing 中田 和子

解放出版社 2004-09


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09 June 2008

悪いのは誰? 松田奈緒子著

悪いのは誰? 1 (1) (クイーンズコミックス)悪いのは誰? 1 (1) (クイーンズコミックス)
松田 奈緒子

集英社 2006-03-17


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悪いのは誰? 2 (2) (クイーンズコミックス)悪いのは誰? 2 (2) (クイーンズコミックス)
松田 奈緒子

集英社 2006-08-18


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とりこになる漫画家、また発見!

新刊が出るのを待ち続ける作家というのがいて、けれど、漫画はしばらく読まないでいるうちにスタンダードな絵柄が変わってきているし、旧知の漫画家の作品も大体は読みつくした感があるとき、新規開拓できるととっても楽しい。
1作だけがとても好きなのとは違って、核心がかなり好みな、その分、作家のブレが作品に現れて揺れてしまって、ときには書けなくなる心配もあるけれど、それをコミでもラッキーな新規開拓なのだ。
この路線で好きな漫画家の系譜は、石塚夢見→中山乃梨子→高田祐子→松田奈緒子 ですかしらね。
または高田祐子→槇村さとる→松田奈緒子でもいいや。
「主人公は明るく鈍感で幸せになるよう設定されていなければならない」をクリアしつつ、皮肉を込めていられる。

この『悪いのは誰? 』も、ピュアなヒロインと、悪役で奥行きのあるオトナな女、そして周囲も人の思惑が玉突きになって事件が起こり状況が変転していく、スピード感のある作品。

人の裏の裏まで考え見通せる人もそんなにいないだろうし、それをやっていると疲れてしまうだろうけれど、そんな高度な人間模様をあぶりだしたような流転を、たった2巻で決着してしまう力量(と画技)に感嘆した。


お勧め度☆☆☆

ちょっと思い出したのが、『悪人』吉田修一著


悪人悪人
吉田 修一

朝日新聞社 2007-04-06


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04 June 2008

100年たったらみんな死ぬ 松田奈緒子著

100年たったらみんな死ぬ 上  (ワイドKC キス)100年たったらみんな死ぬ 上 (ワイドKC キス)
松田 奈緒子

講談社 2008-04-11


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100年たったらみんな死ぬ 下  (ワイドKC キス)100年たったらみんな死ぬ 下 (ワイドKC キス)
松田 奈緒子

講談社 2008-04-11


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『甲子園への遺言』の毒を盛られたあとに、これでようやく浮上。波の上に顔を出しました。
出版社に勤務する姉は、尊敬していた編集長が異動になり、社会派雑誌からカタログ的要素の多いファッション誌にリニューアルした新雑誌で、流行に敏感でオシャレ度の高い新編集長の下でモチベーションが下がっている。前編集長はアルバイトとできちゃった婚なのに、今でもかつての恋人の部屋に勝手に通ってくる。
妹は、仕事一辺倒の会社員だった父に愛想を尽かし出て行った母の代わりに家事をこなしながらの高校生。進学の学費を稼ごうとレジ打ちのアルバイトを始める。
真ん中の兄は、友人たちが皆受かった中で一人大学受験に失敗し、滑り止めの大学に入ってから引きこもり気味。
父は、今では人に役に立つことばかり考えるボランティアが趣味の窓際。

だれもがほとんどうまくいかない状況で始まる。どこかにあるひずみが、もう少しだけゆがんだら、見事に深みに落ちそうなギリギリで、なんとかもがいている。

見事に幸せになるような話ではないけれど、小さなきっかけが少しだけよい方に変わりたいという意識に乗ってきてくれる。そして手放しで夢物語が叶ったりしないのに、漫画的展開はちゃんと用意されている。

兄の友人でもあるインパクトある居候から父の会社の役員まで、この家族も周辺の人も、見事に物語にありがちな設定をしながら、どこにでもいそうな状況の人を組み合わせてこうも話を展開させていくものだ、と面白さに感嘆。
荒いタッチなんだけど(ワイド版で読むから余計にそう感じるのかも)、コマの中の人の配置や切り出した場面、セリフのつなぎ方なんかも、状況=画として、分かるなあ、と漫画神髄発揮。

ラスト。
「100年たったらみんな死ぬけれど それは100年生きたということなの」
「生きることを楽しんでちょうだい 長くて短い100年よ」

は、100年であろうとなかろうと、限りあるなかで、という始まりと終わりの用意されていることなのだということが、その中だけでの出来事なのだということが、生について語られていている。ダメな状況から、運が開けてちょっと努力してみた結果、そういうものが希望のようにもおもう。まるごと希望がこれから「100年」とも。(具体的な希望の持ちすぎは辛いんだけどね)
ちょっとはいいこともあるかもしれない期待。いつか終われるという安心。
それにはさまれているものが100年ごときなんだろうな。


お勧め度☆☆☆☆

「百年の孤独」と言えば、いわずと知れたガルシア・マルケスなのですが、そこから派生したものも、かなりタイトルに強烈なインパクトを受けて創作されているものがあるのでしょう。
(ロック的な言い方だと「インスパイアされた」ってこと?)
百年の孤独
百年の孤独百年の孤独
高田 裕子

講談社 1996-11


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『百年の孤独』のタイトル自体が詩的にきわだっている。
「そんなにも孤独なのか」と耐えられないことと思うだろうか、むしろ「たったそれほどのことだったか」と、ほっと救われる思いに浮かび上がるだろうか。

「人間せいぜい生きて百年だ 百年ですむ」
「人生は永遠には続かない 死んだら解放される 百年のあいだだけだ」
生きても、百年すれば解放される、とするこの高田祐子の本にも、ヒーリング効果は満載だとおもう。
命に限りがあるということは、最終手段ではあるけれど、人生のセーフティーネットだとも感じるから。

04 April 2008

バッテリー(あさのあつこ著)&ドカベン(水島新司著)

バッテリー (角川文庫)バッテリー (角川文庫)
あさの あつこ

角川書店 2003-12


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とある田舎の町に引っ越してきた、野球少年の投手を主軸に、その捕手役、同じ中学のチームメイト、強豪の近くの学校の生徒との関わりなど。
本編よりも、あとがきの迫力がものすごい。著者は、この主役少年の母親の世代。
オトナに対して、無力でもないのに無力にならざるをえない少年たちの鬱屈を晴らそうとしているところに執念を込めているのではないか?
それは、著者の心構えはすごいだろうし、本編にもそういうところは表せてもいるけれど、あとがきに書かれると、ちょっと駄目押しが過ぎる気がする(文庫だったからかもしれないが)。
ただ、無力と扱われることに憤る主役と、その周囲でいいように扱われることにもがいている少年たち、時々、自分を押し通せることもあって、その切り開き方は、強くあり、誰にもいじられたりしない自分を人生ごと引き受けたい強さを感じる。

そこを書きたかったのかな、というのは、応援したい。(欄外でしゃべりすぎだとはおもうが)
あとは、この田舎の町や光景を描きたかったのかなあ。

少年も、周囲の大人たちも、それぞれの人物設定や状況はとても分かりやすく、漫画を読んでいるみたいに楽しめる。吉貞、豪、巧など、メンバーの書き分けも、母親や祖父、近所の人に至るまで、脇役でも脇役に甘んじず、それぞれの生活感がにじみ出ていて、本当にそんな人が息吹いているようにおもう。
けれど、あえて言うと、文章を書いている、小説を書いているのに、文ではなくコトバでつづっている感じがするのだ。場面転換が分かりにくい、誰がしゃべっているのか分からない、時系列がはっきりしない。質の悪い翻訳ミステリーを読んでいるように、物語のなかで、なにかが欠如しているような感じがする。原稿を途中で数枚落として、あらすじだけ聞いて誰かが書き足したのか? 描きたいシーンだけ書いてあとはつないでるだけなのか? など。
かなり読んでいて、小説を読む不満を感じた。ストーリーも人物も背景も悪くないのに、通常こうあってほしいと了解できている部分が欠落していて、著者のせいだけではなく、編集者がいないのか? とさえ思った。

小説というより、マンガの原作にしたらいいのではないか?
漫画化もされているようだから、漫画家さんの力量にもよるけれど、そちらを読んだほうがいいかも。
昨日からドラマ放映されていて、つい観たけれど、でもやはり、脚本は原作と違うから、人物は原作のほうが魅力的に感じた。豪の性格が変わっていたし(ドラマ的には、内向的な主役に対比されるためにしゃべる明るいタイプにしたくなるのは分からないではないが、中に吉貞が入っているんか? と思ってびっくりした)

いいんだけど、上手に書き直してほしいわ。文庫化に当たって、加筆修正をしたらしいが、それがよくなかったのか?
元はいいので、ぜひ小説に直してください。
お勧め度☆

合わせ読み:『ドカベン』
ドカベン (1) (秋田文庫)ドカベン (1) (秋田文庫)
水島 新司

秋田書店 1994-07


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8巻まで野球をしないところが驚いた(^o^;)
1〜8巻では、柔道漫画が楽しめます。

あと、ルールが分からないと、なかなか読みにくいし、肝心の場面らしいのに、何が起こっているのかわからない。これが、超有名漫画というから、皆さん、野球通でいらっしゃるのかしら? 『アタックナンバー1』でもフィギュアスケート漫画でも、ちゃんと枠外にルール解説しているのに、そのへん、もすこし親切にしてほしい。(著者が野球通らしいから、読者も知っていて当然を求められているのか。)読本が必要。

にしても、たしかに動作に動きがあるし画の迫力も、人物の設定もとても魅力的。
高校野球だけあって、全国の代表が集まるから、それぞれの生活事情も入っていて時代的でいい。(閉山予定の炭鉱の町の代表だとか)。その割には地理には無頓着で、高知代表の土佐丸・・・、まではいいけれど、鳴門のなんとかという異名・・・それは徳島だってば(-o-;)
などと、問題がないでもないが、途中から始まった野球漫画も、なかなか見ごたえのあるものです。

こちらは、漫画として読みでのあるもの!

濃密な人物関係が『バッテリー』と対照的な感じがするので(そして人物の魅力が共通)、『バッテリー』を読むとこちらを読みたくなり、『ドカベン』を読むとまた『バッテリー』の続きが気になったりして、相乗効果で進みました・残念なことに、『バッテリー』は6巻で終わり、今まだ『ドカベン』は19巻です。
いったいドカベンは何巻まであるのでしょう・・・。
両方文庫サイズで読めるところがいい。

お勧め度☆☆

28 January 2006

サバス・カフェ  谷地 恵美子著

サバス・カフェ (1)サバス・カフェ (1)
谷地 恵美子

朝日ソノラマ 2005-06


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どことなく寂しげな顔をつい見かけてしまう,群れなくて優等生な主人公。
日本のアメリカンスクールに転校してしばらくたった時期の少年。
楽しげに笑うだとか,屈託無げなところがあまりなくて,他人と必要以上に関わらないそっけなさの取れない,大(ダイ)くん。
……と彼に関わっていくクラスメートや,その家族達の物語。

実は彼は,両親がいないことを隠して通学していたので,トモダチを家に招かざるをえなくなった時,困って偽家族を演じてくれる俳優を頼んでしまっていた……だとか,
それが身近な友人にバレると,今度はお金が無くて大変だろうからと,やたらとおごってくれるようになってしまったが,実はアメリカにいたときに,遊びで作ってみたゲームが大ヒットして,大金持ちだったとか(けれど財産は未成年なので弁護士に管理を任せているという小さなリアルがまたいい)……。

彼の周囲の人たちが,友人として,彼に一歩近づくたびに,「実は……」という人物像なり経歴なりがともに分かり,友人達それぞれも,家族や恋人や兄弟とのそっけなさやあたたかさを交えながら生活している様子が出てきて,読み進めることがとても楽しみな作品です。
文庫本で全4巻。

そっけないのに,惹かれるところもある,自分の周囲にいるそんな人へ,好意を持って近づけそうな,希望の書……といったら大げさでしょうか。私は,おせっかいな友人デリィの‘おっかないお祖母さん’レディ・モートンが好きだな。


お勧め度☆☆☆
また,面白そうな漫画家さん,見ぃつけた! という感じです。
この作者のマンガを読むのは初めてだったのですが,細い線とにぎやかな登場人物たちが,吉村明美のようです。でもそこまで人間同士が熱くなってないところがいいかな。奥底にはあつい思いもあるけれど,人物たちがとっくみあって関わるというより,よそよそしいなかに,一枚下で思いはあり,けれどそれがうまく伝わらないようなところが,この作者の描くもののよさではないかと。もちろん,吉村明美もいいと思っていたけれど,(『麒麟館グラフィティ』も何度も読んでいた)今はこちらに軍配を挙げたい気分なのである。